2012年7月20日金曜日
※本稿は2012年当時の内容となります
前編→https://moeginews.com/archives/2535
朝、ゆっくりと起床。
「あらきホテル」の部屋からは、このように西之表の港を一望する事ができる。港と言っても漁港なので、さして風光明媚な訳では無いが。
起床後はササッと支度をしてチェックアウト。
その後改めて港に出ると、見事な夏の日差し。穏やかながらもジワッとした潮風が海から運ばれてくる。ロケット打ち上げ前だが、人気は少ない。ここで友人と合流。打ち上げ前日という事で、港には様々な関係者や企業の出迎え車両が列を成していた。面白いことに「博報堂御一行」というような車列もあった。
島には比較的猫が多いと感じた。上陸時にも、公園内にて複数の野良猫を確認。
西之表港待合所。多少大きいが、がらんとした施設である。デ・キリコ的空間が広がっている。
なんとも微妙なデザインの「西之表港待合所」。中はそれほど広くないが、8時~17時のあいだ営業しており、待合スペースを利用出来る。WIFIや売店、トイレあり。
島の至る箇所でキャッチコピーのように用いられている「おじゃり申せ」。
Nロケットのような雰囲気の種子島オブジェ。「日ポ交流の地」というフレーズ(文字列)に何故か惹かれる。朽ち果てているが、改修される訳でもなく撤去される訳でもないのが、何とも懐事情が寂しい事の証左か。
その後、西之表からバスに乗り今回使用するレンタカーをピックアップしに行く。
当日までどの車種になるか分からなかったレンタカー、蓋を開けて見ればコレ「日産プリメーラ(2代目)」。15年落ちほどの車両で、やや不安。
その後は水を得た魚の如く、種子島を駆けまわる。西之表から種子島空港までは約25分程度、そこからJAXA関連施設が固まる南種子まで30分程度と、南北でも片道1hを見ていれば問題ないのが種子島の良いところだ。車の数も少なく渋滞等も特に無い為、予定を立てやすい。
逆に、種子島は車が無いと観光は極めて難しい。
各所にロケット関連の施設が存在する。特に見どころがある訳ではないが、改めてこの島がロケット打ち上げに特化した島なのだと感じる。
IHI事務所やMHI事務所が至る所に点在する種子島。建物の大きさで企業パワーを推し量る事が出来るのが面白い。
のどかな畑のあぜ道に、半径3kmの立入禁止区域に関する看板が。
射点を一望出来る、種子島で恐らく一番有名な写真撮影スポットである「ロケットの丘展望所」より。
完全な快晴という訳では無いが、夏らしい雲と青い海が絵になる。
なお打ち上げ前日という事もあり、展望台には10数名程度の観光客で賑わっていた。ロケットの射場への移動は深夜とのこと。激混みというほどではなく、微混みといった程度だ。
種子島の海岸は人が少なく、かつダイナミックな自然が間近なのが素晴らしい。
JAXA 種子島宇宙センター 宇宙科学技術館
種子島宇宙センターの敷地内からも海岸線を見ることが出来るので、博物館や施設見学も良いが普通に自然の風景を見ながらゆっくりするのも良い。国が管理しているだけあった、手の行き届いた空間を利用することが出来る。
博物館自体はそこそこ年季が入っており、予算が常に足りていないJAXAを象徴しているかのよう。
博物館詳細レポに関しては、こちらを参照。
【博物館】日本の宇宙開発の中心「種子島宇宙センター宇宙科学技術館(無料)」リニューアル前訪問記 https://moeginews.com/?p=2535
Nロケットの実物大模型。施設内にはところどころに様々なオブジェが展示してある。
貴重な種子島版飛び出しくん。
今は亡き「大崎射点」(中型ロケット発射場)を望む。大崎射点は日本初の静止衛星「きく2号」が1976年に発射された由緒ある施設で、NロケットシリーズやJロケット、HⅠロケットなど25機ものロケットがここから打ち上げられた。最初は紅白模様だったが、後に白色に塗り替えられこの状態に至る。
Jロケット打ち上げ以降は使用されず、廃材置き場などに使用されていたが潮風による劣化が著しく、この写真の1年後である2013年に解体撤去された。
激動のNASDA時代を象徴するかのような施設であった。
今となってはもう二度と見ることは出来ない「大崎射点」と組立塔のセット。
組み立て塔の高さは81mある。風化しボロボロになっている様はバイコヌールに点在する射点のよう。
と、南種子の起伏に富む地形に、とうとう日産プリメーラもダウン。冷却系がイカれて異常臭が立ち込める様になる。加えてブレーキも効かなくなったので、無事ドナドナされる。
一旦レンタカー屋に連絡をとり、近くのガソリンスタンドまでなんとか自走。その場でプリメーラはレッカーされ、去っていった。代車としてミラを支給される。
夜には機体移動。ロケット打ち上げと共に、種子島での目玉イベントの一つといえる。
ちなみにこの日の宿泊施設は「きく旅館」で、2泊9000円という破格の値段。観光客メインと思われるが、打ち上げ関係者なども利用する民主のようだった。宿内ではロケットの生写真なども販売しており、商魂逞しい宿である。値段相応だが、人情味あふれる宿だ。
7月21日土曜日
打ち上げ日当日。
特に打ち上げ時間に関して変更はなかった為、普通の時間に起床し見学場所へ赴く。天気予報もまずまずだった為、延期の心配も特に無いだろうと緩んだ気持ちで定番の見学場所「恵美之江展望公園」に赴く。
現場の雰囲気。夏の観光シーズンだったが死ぬほどゴッタ返しているという訳では無かった。次第に雨がパラついたりして段々不安になってくるも、特に追加の情報が無いためぼんやり眺める。
また当時はまだまだ整備が進んでいなかったが、現在はある程度舗装などもされ、ジャングル感を薄れているようである。(トイレもある)なお、警察などの法執行機関や警備は少なく、自治もなく割と各々が好き放題やっている状態であった。
公園は大型ロケット射場より北に3キロ程とまあまあ近く、そこそこの望遠レンズを使えばロケット全体をばっちり捉える事が出来る。NHKもここから中継を行っていた。
カウントダウンに関しては誰かが無線をスピーカーで流しており、その瞬間だけ一体感が生まれる。
スケジュール通りのカウントダウン、そして点火。数秒遅れてやや曇ったエンジン音が聞こえてくる。そこまで大きい音ではない。
肝心のロケットの写真がどこかへ行ってしまったので、打ち上げ直後の様子が以下である。
雲が極めて厚い。今まで見た中でも特に厚い雲の打ち上げだった。
場所がら、雲ズボしてしまうのは良くある事なので、雲の向こうから見える燃焼の光だけでも楽しむしかない。JAXAは主体的に打ち上げ見学には一切絡んでこないので(配信除いて)、どこまで行っても民間人の勝手な騒ぎにしかならないのがもったいない。実質滞在時間は1hほどだっただろう。
周辺の見物客も皆そうだが、無事打ち上げも成功したのでと、そそくさと宿へ戻る。
その後は種子島宇宙センター敷地内を適当に散歩して回る。
打ち上げ直後でも宇宙センター内への出入りは可能。打ち上げ当日ということで若干混んでいたが、それでもまだまだ人口密度は低め。やはり種子島という辺境へのアクセスが悪すぎる及び宿泊場所が無いのが大きな原因か。
宇宙センター周辺には珍妙な地形を多く目にすることが出来る。どちらかというと、自然物の方が見どころが多い。
報道用の打ち上げ見学所。こちらはしっかりとJAXAが用意する場所だが、特段射場に近いわけでもアングルが良いわけでもない。また建物は古く、吹きさらしなので環境はむしろあまり良くない。
ガムテープで各社のエリア指定がされていたあと。このような涙ぐましい低予算努力を垣間見ると、残念な気持ちになる。PR領域に関しては特に欧米やロシアを見習ってほしいものだ。
自然と一体化している施設が多いので、妙な構造になりがち。建物も90年代に建てられた大学キャンパスのようで機能美とかは特に無い。
ここから先は主に自然の観光名所を巡る。まずは種子島でも特に有名な「千座の岩屋」。
観光名所と言っても、入場料を取られる訳でもなく、なにか施設があるわけでもない。一応、道は舗装されている。
種子島最南端、鉄砲伝来の場所でも知られている「門倉岬」。1543年のポルトガル船漂着に関する碑石や、神社などが併設されている。
また公衆便所や東屋があり、簡単な休憩スポットとしても利用可能。
眺望は流石に最高で、断崖絶壁という事もありかなり広い範囲を見渡す事が出来る。
周囲は完全にジャングルで、特に見るべきものも無いためか、観光客も皆無。この場所にて、今回の種子島打ち上げ見学旅行は終わりとなった。
帰りは天文館で鹿児島寿司を
その後、西之表に向かい高速船で鹿児島に帰還を果たす。高速船であれば、所要時間は1.5時間ほど。料金は大人片道10300円とやや高だが、フェリーだと乗り場含め種子島〜鹿児島航路は不便な事が多すぎるので正直選択肢はこの高速船しかない。
サクッと夕刻には鹿児島にたどり着き、本日はここで一泊。晩飯には地元の回転すしチェーンに向かう。
■店舗情報
店名:廻る寿司 めっけもん 鹿児島中央駅店
住所:〒890-0045 鹿児島県鹿児島市中央町1丁目1
営業時間:11時00分~21時00分
公式HP:http://www.jf-group.co.jp/restaurant/mekkemon/
メニュー例:生ビール中572円、まぐろ1皿209円〜、他
喫煙:無
総括:種子島キャンプツーリングの可能性について
現在、種子島での観光については以前とかなり状況が異なっている。まず、近隣の馬毛島(まげしま)に航空自衛隊馬毛島基地が作られる事になり、その工事関係者や防衛省関係者が向上的に種子島に滞在しているため恒常的に宿泊の絶対数が足りていない。馬毛島自体、もともとHOPEの着陸場としての構想もあったりと(今での種子島にてその残滓を確認することができる)無人島ではあるが知られた存在。
ともあれ、宿泊の需要と供給が一致していない現状に加え、宿泊コストは以前より当然のように増している。種子島で金の掛かるアクティビティは特に無いので宿泊費や交通費が最大の支出となるだろう。
となってくると浮上するのが、キャンプツーリングの可能性だ。カーフェリーに関しては経験済みで、そこまで利便性が悪い訳ではない。(船室での暇つぶしさえ出来れば)距離的に3時間半ほどと、新潟〜佐渡間と大差ない。寝てれば速攻着く程度だ。
そして種子島最大の魅力はその自然と人口密度の低さ。観光客を受け入れるにはまだまだな現状のため、リゾート感覚で来るとかなり不便を強いられる部分が多いが、逆にその辺も含め自分でハンドリング出来るを良しとするならこれ以上に面白い場所はそうそう無いだろう。
キャンプ場に関しては5箇所存在。どれも低規格の野原に近いサイトが多いが、海沿いサイトが多く比較的年間を通じてかなり良い体験が出来そうだ。沖縄ほどゲリラ豪雨も多いイメージはないので、そこまで雨を心配する必要もないだろう。
なにより、今種子島は過渡期を迎えている。今まで通り数ヶ月おきにJAXA関係者が大挙して襲来し宿は満杯、な状況に加え本土から数百人の自衛隊関係者が常駐している今後、かなり島の経済にも変化が訪れるだろう。その前に、ギリギリ手つかずの種子島ツーリズムを体験してしまうのはありかもしれない。
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