日本では過去最高レベルの盛り上がり
2024年1月19日、23時の遅い時間からJAXAの小型月着陸実証機SLIMのピンポイント着陸YouTubeLIVEがJAXA公式チャンネルにて実施された。知る限り、過去一で盛り上がったライブだったのでその際の感想を覚え書き程度に残したい。
今回は事前よりそこそこ周知が成されていた為、X上でもかなり認知度が高く、また金曜深夜という事もあって同日日中にテレビやWEBニュースなどでタイミング良く露出できた事もあり、着陸10分前で同時接続数20万という、行政系が実施する配信としても異例の高数値を叩き出していた。
良くも悪くも、ビジネスではなく純学術目的なISAS感満載の配信だった。以下、思いついた点を挙げる。
理事含む多数のゲストが代わる代わるトークしていた点。様々な人の思いがしっかりと伝わってきて、血の通った宇宙開発、という印象を抱いた。
着陸からかなり前倒しての配信だったので、前説には十分な時間が確保されていた。ロケット打ち上げを含め、本番時刻から逆算して60~90分程度前に開場するのがベースと考えると、トークで間を持たせつつ、しっかりとミッションの「意義」や「中の人たち」を紹介するのが正攻法に感じる。
MCとメイン解説の二人はピンマイクでも良かったかも。マイクがかなり目立っていて、センター固定カメラ画面がかなりごちゃごちゃしている印象。そもそも会場が少し狭すぎ、ローテーブルというのであればもう少しスッキリしたほうが見栄えよい。
こちらは予算が限りなく少ないISASなので、と言えばそうなのだろうが、恐らく100万円も掛かってないのでは?(サイマルやら記者会見部分除く、純粋な配信部分のみ)という予算感の現場に思える。こう言ってはなんだが、SLIM自体が成功しても配信で事故が発生すると同時接続している20万人は「失敗」と感じる可能性があり、それらがSNS上で拡散されるというケースも無くはないので、PRはしっかり確実に、という観点は必要かと思われる。
リップシンクが最初からまあまあズレていた。
こちらも同上で、テレビ制作系とまでは行かないものの、確実な技術と経験がある番組制作体制を敷くべき案件だろう。
テレメトリ画面に入ってからもラウンジ風BGMが生きていたので、雰囲気が少し微妙
こちらは感性というかセンスの問題で、特に日本系と欧米系とで宇宙開発に関して顕著に差が出ている部分である。当たり障りのないBGMといえばそうなのだが、対外的に打ち出しているSLIMのトンマナに合わせ、BGMももう少しアップテンポでポップな感じでも良かったのでは無いだろうか。
クリエイティブ部分にもう少し予算と労力を投入すべきでは、という印象を受ける。
テレメトリ画面だけ見ても臨場感無いので、管制室をメイン、テレメトリを画面3分の1くらいが配信的にそれっぽくなりそう。
こちらはチャットでもそこそこの頻度で見られた、あるいは記者会見時に記者からあった質問でもあるのだが、実際に対応している職員の様子は見せた方が良いのではと感じる。金曜深夜にネットで生配信を観ている人間はそこそこ宇宙開発に興味があり、恐らくSpaceXやNASAのロケット打ち上げ映像も多少観てきた人間が多いだろう。米国では必ず管制室の映像を流し、彼らがどのような反応を取っているか、などを映像に組み込む事で「感動」を演出し配信に付加価値を乗せる。結局国民の理解無くして事業なし得ないので、どのような絵があるとより良い配信・コメントにつながるのかをしっかり考えた方が良いと感じる。なので管制室の生フィードは必須と考える。
理想はチャンドラヤーンの時のように、管制室のフィードを生で出すのがやはりベスト
比較対象として事情が大きく異なる事を前提としつつ、やはり個人的に一番気になったのが2023年8月のチャンドラヤーン3号月面到着生配信との違いだ。
チャンドラヤーン3号も正直どうなるか分かっていない感多くありつつ、3Dアニメーションで「着陸したようだ」という事がその場で「事実」と認定され、すぐにPMやら局長やらが管制室にて全職員に向けてスピーチを行っていた。非常に分かりやすいし、管制室職員も大賑わいで観ている我々も非常に嬉しい気分になる良い配信だった。そして何より、オンラインでモディ首相からの熱いお祝いメッセージや、インドが今後宇宙開発でどのような道筋を目指すのか、という事が力強い言葉で語られていた。
映画のような出来すぎた展開にも見えるが、実際の利益に直結しないだけに多分に意味や価値を見出すのが難しい領域ではあるので、政府のしっかりとした演出は必須のように感じる。メディアを通じて国民が欲しているシーンを作り出すのも、当事者達の重要な責務ではないだろうか。
・MCのテンション、着陸前にもう少しテンション高くても良いと思う ・やはり状況確認時間等の幕間を旨く活かすため、演者撮り切りに移るなどワークが欲しい。
これらは事前の台本作成や企画でどうとでもなるテクニックとなる部分だ。著名ゲストや、トークが出来るVtuberなど、無償に近い金額で出てくれる人間をピンポイントで投入できるような体制があると良いだろう。
JAXA、不具合発生時の対応が遅く急に葬式モードに入る癖があるのでなんとかしたほうがいい
こちらはもはや十八番というか伝統芸能というか、配信という形で自ら門戸を開くのであれば、視聴者に寄り添う姿勢にする必要があると感じる。視聴者には小学生もいれば大学生もいるし、宇宙開発の知識が無い人も大勢いるので、少なくとも簡潔・明瞭をベースとしつつ、明るい番組作りに徹するべきだと感じる。無論、有人ミッションとなると話は別だが、少なくとも常に前向きな姿勢は示すべきだろう。
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