毎年恒例、ロッキード・マーティン版ゆく年くる年
かつては「Best Moment」という形で、その年に起きた代表的な15~20程度のトピックが紹介されていた企画だが、今年は割りとシンプルに「2023 in Review」という形で公開されていた。
早速、業界世界1位にとっての2023年がどんなものだったのかを読み解いていく。
やっぱり強かった「OSIRIS-REx」の成功
ロッキード・マーティンは分かりやすく防衛セクターのウェイトが大きい企業なのだが、意外にも今年は最初のトピックとして7年かかった小惑星へのサンプルリターンミッション成功について紹介している。
2023年、宇宙開発的にはSpaceXが100回近くファルコン9シリーズを打ち上げた上、Starshipなど規格外の特大ネタを連発しまくった事もありNASA初めULA関連あるいはロッキード・マーティンの存在感はかなり薄かったと言わざるを得ない。そんな中、まだSpaceXに対して優位性のある科学探査ミッション系のOSIRIS-RExの成功は、社としても全力でアピールしたい案件だったのだろう。
順調に巨大化するF35横展開
F35のセールスも順調で、地政学的諸々でその需要は今後も一層高まりそうである。今年のF35関連での主な出来事としては、
- カナダが将来戦闘機としてF35を採用決定
- ポーランド向けF35が正式に生産開始
- デンマーク向けの最初の4機が納品
- ベルギー向けの最初の機体がロールアウト
熱核ロケットエンジン:DRACO
2027年のデモ飛行に向けて、国防省のDARPA、NASAの共同プロジェクトでロッキード・マーティンが契約を結ぶ進めているのが熱核ロケットエンジンプログラムのDRACO。最終的には有人火星探査に用いることを目標にしている。
科学推進系に比べ熱核エンジンが強力なのは明らかで、燃料や運用に関してもクリアになっている部分が多いようで27年と意外と早いタイミングでテストを行うとのこと。超重要プロジェクトであるが、出だしは静かである。
地政学的リスク増大への対処
ウクライナでのフルスケール戦争が続き、中東情勢がかなり緊迫しているなどNATO的にも依然リスクが高い状況が続く中、PAC-3やHIMARSなどの生産体制を強化、中欧~東欧クライアントへの供給を重視するという短いステートメントがトピックとして挙がっていた。
周年系
意外でもないのだが、スカンクワークスが80周年、シコルスキーが100周年の節目に当たる2023年。歴史が短い国にも関わらず、A&D分野においては老舗中の老舗と言える。
ブラックホーク、5000機達成
アメリカといえばブラックホークだらけな印象があるが、実際に5000機達成ともなると本当にブラックホークだらけなのだろう、と思える記録。
その他
- 次期短距離ミサイル「PrSM」の試験成功、納入へ
- 働き方がA&D分野で世界一、ダイバーシティも世界一な職場
- 米海軍と統合戦闘システムの契約
- 退役軍人サポート強化
- オーストラリアにC-130Jを20機納入する契約
- スロバキアにF16ブロック70の納品決定。ルーマニアにF16訓練センター新設。
世界最大の軍産複合体の動向は、時代状況を色濃く映すものといって過言ではないだろう。ただし、宇宙開発関連でも多くのマイルストーンを達成した事は間違いなく、今後も宇宙及び防衛関連ではこの会社の動向は注視していきたい。
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