【実物見学】ドイツ国防軍:V-2(A4)ロケット

航空宇宙

宇宙時代のはじまり

V2ロケットは量産に成功した世界初の液体燃料ロケットである。第2次世界大戦末期に大量生産され、1358発がロンドンに向かって発射された。兵器面での使われ方も非常に衝撃的だが、ロケットとしては20世紀から現在に至るまでの宇宙開発の方向性を運命付けた機械でもあるため、ある意味RAF博物館の中でも特に重要な展示物という事が出来る。

基本情報

用途:艦上攻撃機
開発メーカー:ブリティッシュ・エアロスペース/マクドネル・ダグラス
初飛行:1978年
生産数:47機
全長:13.9 m
翼幅:7.7 m
全高:3.5 m
展示場所:ロンドン・RAF博物館
https://www.rafmuseum.org.uk/research/collections/german-army-v2-assembly-4/
展示機体備考:Reference 85/O/164

イギリス・RAF博物館ロンドン展示機体

展示機のカラーリングは大戦末期のオリーブドラブ配色で、軍事色が強いもの。今見れば単なるロケットだが、当時は存在そのものが画期的なものだった。

勿論、突然このような兵器が出現した訳ではなく、当然非常に重い歴史の重圧から捻り出された産物だった事が分かる。

1914年、「全てを終わらせるための戦争」になるはずだった第一次世界大戦が勃発。数百万の戦死者を出したドイツは1918年に降伏。戦勝国との間で締結したヴェルサイユ条約により、1919年から重砲の製造を禁止された。これによりその後、ドイツ陸軍は重砲に代わる新たな長射程兵器として、ロケットの利用を本格的に検討することとなる。

その後ロケット推進については陸軍のヴァルター・ロベルト・ドルンベルガーが、1932年にまだ19歳だったフォン・ブラウンを研究に加えた辺りから急速に進捗し、V1の開発と平行してA4(V2)ミサイルの開発へとつながる事となる。

途中、様々な困難にぶち当たりながらも1940年になってようやく適切なロケットモーターの製造に漕ぎ着ける。その後、人類史を永遠に変えた最初のロケット打ち上げは1942年10月3日の事であった。

兵器としては、1944年9月8日午後6時43分に最初のイギリス本土攻撃としてロンドン西部チジックにV2が着弾。結果、約10,000機のA4(V2)が生産されたが、兵器運用されたのは約3,000機に過ぎなかった。

実践結果はともかく、V2ロケットはイギリス国民に強烈な記憶を植え付けたのだった。

先端はフェアリングでなくそのまま弾頭となっていて、現代のロケットであれば衛星が収まっている位置にジャイロコントロールが設置さえていた。ペイロードは少なく、機体大部分をアルコール水と液体酸素が占めていたのである。

このロケットのマニューバはロケットの下部に設置された推力偏向板で行われた。当時はまだジンバルではなかったのだ。また大きな翼自体も、末端に制御翼が取り付けられ機体を調整することができた。

直径も、今日見られるロケットのようにバカでかい訳ではなく、あくまで重砲のスケール感の範囲内であると言える。そのため、野戦用機動兵器として計画され、鉄道運輸が可能であった。鉄道トンネルも通過可能だったし、発射用車両に搭載されそのまま直立する事が可能であった。故に、安定的な形状をしている。

エンジンは25トンもの出力が設定された。

推進剤はアルコール水と液体酸素となる。燃焼器エリアは鋼製。燃焼器それぞれは1.5tの推力を発生した。

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