紛れもないスーパースポーツ
ホンダコレクションホールでは、ホンダが過去に一般販売した車両や、ほとんどワンオフに近い試作に近いような珍しい車両、そしてクラシックを中心とした海外の珍しい車両を大量に保管している。そしてその多くが動態保存という形で、かなり入念にパーツの隅々まで磨き上げられているのが特徴だ。
というわけで、「あの頃憧れてた」バイクが新品同様の状態で拝める、一種のタイムカプセルのような博物館な訳だが、ホンダがたまに出してくる「なぜこれを販売したのか」というバイクも一同に見ることが出来るのが楽しい。そして過去ホンダが販売したバイクでも特に異色なのが（五本指に入るくらい）、この「RC213V-S」だろう。
モデル名：RC213V-S
メーカー：ホンダ
生産年：2015年
気筒数：V型4気筒
排気量：999cc
重量：188kg
最高速度：
馬力：70ps(スポーツキット装着で215ps)
単刀直入に言うと、「MotoGPマシンを公道で走れるようにした」バイクである。定価は2190万円と記録級のもので、全世界で200台程度が販売された。競技用バイクを一般公道で合法的に走行出来るよう開発された新たな試みのバイクで、変更点は保安部品の装着と、メンテナンス性からカムギアトレインをニュウマチックバルブからコイルスプリング式への変更など、ごく一部に留められているという。とは言え、留めたところで合法的に走行する範囲では何も変わらないだろう。
MotoGPマシンならではのインパクトのある機体で、ウインカーなどの保安部品もかなり目立たない工夫が凝らされているように感じる。ただ、V4スーパースポーツということで圧倒的な威圧感などは無い。カラーリングはど派手なホンダトリコロールカラーで、カウル中央に日の丸が描かれている。
ダイヤモンドフレームの輝きが美しい。ほぼMotoGPマシンのRC213Vと同じ作りなので、もちろんフレームもほぼ同じ物となっている。
今でもほとんど見ることがない、「ブレーキレバーガードにアドオンされたミラー」。レバーガードにかなり剛性が必要そうだし、振動でまともにミラーとして機能するのか甚だ疑問だが、乗ってみないと分からないパーツ代表格だ。
ブレーキ周りも公式サイトによると以下の変更となっているらしい。
・フロントブレーキディスク:ユタカ技研社製(ステンレス材)
・ブレーキパッド:ブレンボ社製
2015年と比較的新し目なマシンで、全体的にカーボンファイバーが多用されている。スーパースポーツなスイングアームは溶接跡が非常に美しい正に匠の工芸品。手溶接のハンドメイドである。
一般公道走行のため追加された触媒付きマフラーも、傍から見ればサーキット仕様な雰囲気。
無論、シングルシートとなるが、シート自体もかなりスパルタンなもの。シート高830mmと高め。公道用にフェンダーが導入されているが、ほとんどの人は購入したら即フェンダーレス化するのではないだろうか。シートはかなり硬そう。
発売定価2000万オーバーの機体の近くには、様々な珍車が展示されていた。これぞホンダといった感じである。
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