夕方クイーンズタウンの帰宅ラッシュに巻き込まれ、一気にやる気を失ってしまい夕食を観光地のマックで済ませるという暴挙に出てしまった9/16の輪行。ところが宿が想像以上に快適空間で一気にスタミナを回復し翌朝を迎え、今回の旅行でも特にアドベンチャー度MAXとなった2022/9/17ニュージーランド南島ツーリング3日目の模様を紹介する。クイーンズタウンから噂に聞く秘境「パラダイス」に向けて出発するところから、本日のツーリングは始まる。
前回の記事→2022年ニュージーランド南島バイクツーリング:③フランツ・ヨーゼフ~クイーンズタウン https://moeginews.com/archives/1051
■動画
■↓本日のルート
朝のクイーンズタウン
朝6時。起床しバイクを確認しに行くと車体の至る所に霜が降りていた。宿の裏にある丘の陰に駐車した為、朝日が当たらなくなかなか霜が解けなかったのだろう。F750GSはカウルのほとんどとタンクのフェアリングも樹脂製の為、そこまで困ることは無かった。
パニアケースもかなり気合の入った霜の降り方だったが、タオルで拭けば落ちる程度だったのが幸いした。どちらかと言うと坂道が多いクイーンズタウンの路面凍結の方が気になったのだが、前日雨が降っていたわけでもなくアスファルトもそこまで湿っている感じはしなかった。なお、塩カルのようなものも特に撒かれている雰囲気では無かった。一通り荷物の積載を完了し、出発前の一服に向かう。
共用テラス部分からの望め。宿は街の中心からやや離れている上、小高い丘の上にあるのでアクセスは最悪に近いがその分眺望は最高。テラスからはワカティプ湖と山が一望できる。ちなみにワカティプ湖はニュージーランド第三位の巨大湖で、その大きさ291平方kmと霞ヶ浦よりも100平方km以上大きい。かなり細長いので対岸の山が普通に見えるが、山自体がサザンアルプス山脈に連なる超巨大なものなので距離感が狂う。
寒いので誰もいなかったが、広めのバルコニーでは朝食を取ったり一服するには丁度いい場所で、この施設のウリの一つだろうな、と思った。ちなみに奥の建物はカトリックの教会だ。勿論誰も居ない。
ちなみに、このテラスがあるのはこちらの談話室。宿の規模相応の広さがあり、キッチンや大型冷蔵庫、大型テレビやらボードゲームの類まで、ドミトリー的な設備が一通り揃っている。やや妙な香りがするのが玉に瑕。ドミトリーでよく見かける、誰かが残していったコーヒーや紅茶などが揃っている。
諸々の準備を完了し、チェックアウトしようとする。ところが受付には昨日のジャージマン1がおらず、防犯シャッターが降りている。シャッターとカウンターの隙間には鍵が幾つか挟まっており、なるほど合点という事で自分もキーを差し込んでチェックアウトとする。ニュージーランドはチェックアウトがゆるい。
一路「パラダイス」へ向かう
今日最初の目的地、「パラダイス」はニュージーランドの観光局のサイトでも紹介されているほど有名なあの「ロード・オブ・ザ・リング」でケイト・ブランシェット扮する最強のエルフ「ガラドリエル」2が治める「ロスリン」シーンのロケ地となった場所である。
■↓ニュージーランド政府観光局の下記サイトが非常にわかりやすい
様々なブログを見る限り、かなり良さそうな感触。ということで、クイーンズタウンから片道50kmほど、かつ行き止まりのため今回のような一周系ツーリングではかなり余分な工程となってしまうのだが折角なので行くこととした。なお、日本語のブログ情報があまり無いので実際どのような場所なのか正直分からないままでの突入となった。
ワカティプ湖畔ロード
朝日がだんだんと昇りつつあるワカティプ湖。クイーンズタウンからパラダイスまでは50kmほど一本道(Glenorchy Queenstown Rd)で、その工程のほとんどがワカティプ湖沿い。常に左手に巨大湖とその向こう側の山脈(サザンアルプス)を一望できる。この段階で朝7時くらいだったので、交通量もほとんどなく快適に湖畔のアップダウンのある道の快走する。
途中、「Viewpoint」が沢山あるので安全に駐車して写真を取る場所が沢山ある。初日は峠道、2日目はジャングル、そしてこの3日目はロード・オブ・ザ・リングの世界を走っている感覚に陥る。とにかく延々と続くワカティプ湖とその向こう側にそびえ途切れることの無いサザンアルプスの山々のセットがに圧倒される。
唯一欠点を上げるとすると、湖を左手に北上することになるのでどうしても太陽の光が右手の山に遮られてしまい、やや寒い。といっても、凍える程ではなく100km巡航でも重ね着すれば全く問題無いレベルだったのが救いだ。
ワカティプ湖の周りに沢山あるViewpointの一つ。ここはまだ新しく、30台分くらいの駐車スペースと水洗トイレ、きれいに植えられた真新しい植物の苗が印象的だった。駐車スペースから5分ほど小高い丘をのぼった場所に、ウッドデッキの展望所がある。
展望所からの眺め。画像の奥の更に向こうがクイーンズタウンになる。ご覧の通り、画像左側が東になるので、完全に日光が山に遮られているのがおわかり頂けるだろう。そしてこの画像、ただの森にしか見えないと思うが、中央左側に少し道路が見える通りしっかり道が通っている。と言っても片側1車線の道が数十キロ続いているだけであり、人工物はたまにある山荘以外ほぼ無い。圧倒的自然度を満喫できる。
同じ場所より、今度は北側を見た図。湖に浮かぶ島は「ピジョン島」というらしい。そしてその奥の山はサザンアルプス、そしてその更に奥に世界遺産「ミルフォード・サウンド」がある。
ついにパラダイス突入、そして敗退
そして更に奥へ奥へと北上していくと、グレノーキー(Glenorchy)という集落に到着する。本当に小さな集落だが、ガソスタや売店、カフェなどは揃っている。非常にこじんまりとしたオシャレな雰囲気で、一応観光拠点にもなっているようだ。
そして村を通り過ぎて更にまっすぐ行くと、朽ち果てた農業トラックと「Paradise」の看板がある。そこから先は砂利道となっており、ここから先がいよいよパラダイスのエリアとなる。
砂利道をドコドコ進んでいくと、トラクターやらが現れ始め、完全に広大な農場の中を走る道と化する。あれ、なんか知らないうちに私有地入ってないかこれ?と不安になってきたところで向こうからランニングをしているアジア人女性が近づいてきた。こんな最高な環境で朝のランニングとか最高じゃないですかと言いたくなったが、神妙に「ここ公道ですよね?私有地じゃないですかね?」と訪ねてみたところ「ずっと公道だよ!ただ行き止まりだけどね!」と明るい返答が。頂軽装な女性はそのまま去っていった・・・
行き止まりまではずっと公道なのか・・と勇気づけられた筆者はそのまま砂利道をひたすら走った。GoogleMap上では「The Road to Paradaise」という地点から少し先まではストリートビューが見れるのだが、途中でGoogleも断念したのか終わっている。だんだん砂利がきつくなってきて、車じゃないとこの道キツいかも、と思い始める。
森や橋を越えると、「Diamond Lake Area」という公営のキャンプ場が現れる。ここがパラダイスでは最後の公衆トイレとなり、水場にもなるので必要あれば立ち寄って置くことをオススメする。湖のそばなので、キャンプするには最高の場所かもしれない。
さらに進むと、GoogleMap上で「Lothlórien」3となっている場所を通り過ぎる。本当にあのロスリンなのかは不明だが、確かにそれっぽい雰囲気はある。ただ、その神秘的な雰囲気を堪能するほど当時は余裕がなく、全くなれないオフロードでなんとかコケないようにどんどん悪路になっていく道で機体を制御するので精一杯だった事を今となっては思い出す。
そして程なくして携帯は圏外になり、小さな水の流れが(Ford)がいくつか出現し始める。渡河かーーー!と思いつつ、そこはF750GSなので問題なく突破、と思いきやそれすらも慣れていないので、砂利にタイヤを取られたりとコケないようにするので本当に精一杯。気づけば汗だくになっていて、苦しんでいる割に自分が結構楽しんでいる事に気づく。オフロードバイクはあまり興味無かったが、これはセローとかだったらもっと楽しいのでは、と気づいてしまった瞬間である。
そして上記画像の地点で、森の中で深みのある川にぶち当たり、川を越えた先が急な坂(明らかに湿った砂利道)でこれは帰りコケるな・・と直感してついにバイクを下車。ここからは徒歩で進む事を決意する。
今回の旅における最深部到達点にて。バイクを降りてから20分ほど歩き、ついにGoogleMap上でviewpointとなっていた地点に到達する。
周囲を山に囲まれ、わずかながら生じた盆地のような空間。山から冷たい乾いた強い風が吹き降りてくる。完全な静寂の空間だ。ここまで静かな空間は11月に登った富士山頂上や秋の北アルプス雲の平以来である。
強い風で芝に跡が出来ている。道はまだ先に続いており、本来であれば川にぶち当たる地点まで道があるはずなのだが、バイクを置いて徒歩でここまで来たのでこれ以上の北上は断念。完全な敗退である。
ニュージーランドには3000m以上の山が24あり、そのうち19が南島のサザンアルプスに属すると言われている。パラダイス周辺にも3000m以上の山があり、また2000m以上の山となると無数にある。日本最大級の高い峰々が連なる長野の北アルプスとは異なり、サザンアルプスは南島を北から南まで一気に貫いておりその規模感は桁違い。日本の北アルプス(飛騨山脈)の長さが約100km前後であるのに対して、ニュージーランドのサザンアルプスは500kmと数字だけでも5倍の長さ。(ニュージーランド南島の縦の長さは840kmなので、その異常な巨大さが分かる)サザンアルプス全山縦走など、考えるだけでも鳥肌ものである。
苦しめられたFORDにて。普通のSUVくらいなら難なく突破できるレベルではある。帰り道は途中の内容を把握しているので、清々しい気分で快走する。これがまた気持ちいい。
砂利道を走りすぎて振動で勝手に曲がったミラー。コケてないのでミラーが曲がると流石に焦るが、まあ揺れていたからやむなし。
バイク屋でメカニックのメイソンが貸してくれたツールにレンチがあったので助かる。また何となくサスペンションのプリロードも緩めだったので、そこまでお尻が痛くなるようなことも無かった。F750GSの走破性恐るべし。
パラダイス手前の舗装道路と砂利道の境界線。砂利道に入ってからがとにかく長い。正直オフロードに慣れていれば、大したことは無いと思われる。
死闘の後:昼食
グレノーキーの集落のど真ん中にある雑貨屋兼カフェ『Glenorchy General Store』にて昼食を取ることにする。雑貨屋とは言っても雰囲気的には原宿にあるようなかなりイケてる感あるカントリー感あるきれいな店舗で、東京だとオーガニック(笑)となってしまうような雰囲気も、ここでは圧倒的説得力のある造りとなっていた。(勿論、店の人は皆フレンドリーで価格も普通)
店内にもテーブルなどあったが、山が見えるテラスの眺めが超絶良かったので激闘を終えたF750GSを見ながら「シュニッツェルサンドイッチ」を食す。
シュニッツェルサンドイッチは初めて。ド辺境の地だが、クイーンズタウンで食べたマックのハンバーガーの200倍旨く感じた。とにかくデカい。うまい。
フェアトレードコーラなるものを発見したので飲む。ウマすぎて2本飲む。
敗退したものの、完全にやりきった満足感と巨大シュニッツェルサンドイッチを食べた満腹感で今日はもうおしまい!としたくなる一歩手前まで行ったが、天気が良すぎる上に昼になると山の景色がよりはっきりと見えて来たので、そそくさとクイーンズタウンまで戻る事にする。
ニュージーランド南島の道沿いは、ジャングルか海か山か牧場か、のどれかがほとんど。
クイーンズタウンを通過し更に南下(昨日延々と走っていた6号線に戻る)すると、今度は山を一度抜け平野部に進むことになる。すると、このような羊牧場の光景が延々と続く。
この日の目的地はミルフォード・サウンドの前線基地となる「テ・アナウ」。ミルフォード・サウンドでの宿泊も検討したが、正直手前には微妙な宿しかなかったので手頃な価格とニュージーランドで2番目に巨大な湖「テ・アナウ湖」があるテ・アナウに宿泊すること決めた。
クイーンズタウン〜テ・アナウへは6号線→97号線→94号線といった形で大きく2回右折する。ただ2回右折する以外は一本道とは、冷静に考えると恐ろしいレベルでシンプルなニュージーランドの交通網だ。特に94号線に入ってからは車通りも少なく、おそらく本当に人口密度が低いエリアであろう無人エリアが延々と続くので、両サイドに大自然をひたすら突き進むという個人的には最高の道なのでは、と言えるほどだっった。
そしてこちらは名も分からぬPA。前後数十キロほどんど何もなかったので流石にバイオトイレだけポツンと設置されていたが、キャンプとして利用可能な場所だった。こんな場所に誰が立ち寄るんだと言いたくなるような場所だが、しっかりと植物や山の説明書き看板もあり、環境保全というか細かいとこまでしっかり説明するニュージーランドの自然保護方針に感服するばかりである。
テ・アナウのおっちゃんが経営するモーテル「Aden Motel」へ
へとへとになりながらも、なんとか日が落ちる前にテ・アナウへ到着。こじんまりとした街で、湖にほど近いモーテル「Aden Motel」にチェックイン。受付で呼び鈴を鳴らすとめちゃくちゃ訛りの激しいおじいちゃんが出てきて小話する。テ・アナウは訛りが激しいのか・・と思いつつ、一旦荷物をアンパック。
今回の部屋はキッチンが別室で独立しており、オーブン、4口電熱コンロ、電子レンジ、冷蔵庫と一通り完備されており完全に自炊可能な状態。素晴らしい。
シャワーだけだが、これまたキレイなお部屋。必要なものはすべて揃っていた。洗濯カゴがあるのが気が利いている。
ちなみにベッドはシングルが何故か3つある部屋だったのだが、クッションはケア。どんだけ好きなんだよと思いつつ、ケア愛に満ちたオーナーなのだろうと勝手に納得した。勿論電気毛布装備。
部屋の軒先に設置されたテーブルと椅子と灰皿のセット。愛車を眺めながらビール片手に一服する、最高の瞬間演出基本セットとでも言おうか、これとにかくは大事だ。
珍鳥を見に行く
ニュージーランドを3日間走行して思ったのだが、ニュージーランドは鳥が多い。しかもカラスや鳩の類ではなく、明らかに見たことも無いような鳥が多い。そしてここテ・アナウにも珍しい鳥がいるとのことで、宿から5分ほど走った場所にある無料の野鳥センターに行ってみた。(何故か24時間営業らしい)
目当ては「タカへ」という鳥。
この鳥、「Antipodes Island parakeet」は南島からかなり離れた場所にある無人島のアンティポデス諸島固有種のムジアオハシインコという激レアなオウムらしい。説明のイラストだとややキマっている感じだが、実物は非常にキレイなモエギ色の羽を持った美しい鳥だった。看板によると「エドワード」「リーピチープ」「バターカップ」など一部クレイジーな名前を付けられてしまったようだ。
金網でガッチリガードされていたので上手に撮影することが出来なかったが、人に怯える様子もなく普通に姿を眺める事ができた。実物はとにかくきれい。写真でみるカカポに若干にてるかも。
そしてこちらが絶滅危惧種タカへ。沖縄のヤンバルクイナと同じクイナ科だが、超巨大で飛べない。勿論金網の中で厳重に保護されていたが、こちらが近づいても意に介することなくひたすら地面を突っついてた。なお、短距離であれば普通に羽ばたいて飛んで(ジャンプして)いた。完全に飛べない訳ではないようだ。
祭りの準備
鳥の見学を終えた後は、その足で大型スーパーへ。広い店内では基本的なものはすべて揃っていたのだが地元農家が作ったハムやローストビーフといった惣菜系がかなり充実していた。しかも閉店近かったからか安くなっており、パンなども含めバカスカ購入。思い切って牛フィレ肉とワインなども購入した。
ニュージーランド名物アイスは大量に陳列されている。ホーキーポーキーも勿論ある。
今晩は自炊を決意し、上記食品を購入。この中ではおそらく国産フィレステーキ肉100g3.2ドル(290円くらい)が超特価と言えるだろう。チーズなどの乳製品も安かった。逆にサラダやトマトは少し割高に感じた。アボカドは1.2ドルなので100円くらいだが、味が日本とは段違い。圧倒的に美味かった。
まずは惣菜の肉とチーズをつまみにニュージーランドのメルローを飲む。うまい。
ここにあるものすべてニュージーランド産というのが素晴らしいのだが、適当に自作しても普通にめちゃくちゃ美味しいのがニュージーランド製品の最も称賛すべき点。料理下手でも有り余る素材のポテンシャルに感謝。普段から普通プライスでこれらを食べれるニュージーランド人が羨ましい。
またこのような突然の自炊でも対応できるのが、モーテルを選択する大きな利点である。食器も綺麗で全く問題無し。
なおテレビはマオリチャンネル(マオリ語のチャンネル、ドキュメンタリーやらニュース番組やら割とバラエティ豊か)をなんとなくいつも見ていたのだが、ラグビーも興味なくてもだんだん面白く見えてくる。そしてついに、腰痛が始まったので準備していたロキソプロフェン湿布を腰に使用。処方箋で出された湿布は効きが違うので、平均400km/日走行した今回のツーリングではとても重宝した。
たらふく食べ、テ・アナウ湖を少し散策しようとしたがそのまま力尽きて本日は就寝となった。
2022/9/17走行データ
- 走行開始時刻: 07:56
- 走行終了時刻: 18:02
- 走行距離:約320km
- 主要走行ルート:クイーンズタウン~(Grenorchy ~ Queenstown Rd)~パラダイス~(6号線&94号線)~テ・アナウ
(9/17完)
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