ロード・オブ・ザ・リングロケ地「パラダイス」にて大自然に対しF750GS「デイジー号」で挑むも敗退、清々しい気分でクイーンズタウンを後にした筆者。大自然を駆け巡り、辿り着いたテ・アナウにて珍鳥を見学しつつ、肉と酒で一人宴会を実施し満たされた翌日2022/9/18の模様をお伝えする。本当は世界遺産「ミルフォード・サウンド」に進路を取る。
前回の記事→https://moeginews.com/archives/1053
素材を活かす
前日、調子に乗って必要以上に食品を購入してしまったので、余った食材でサンドイッチを造り昼食とすることにした。購入したドレッシングがバタ臭い味で駄目だったので、塩コショウ程度しか味付けしていないのだが肉とチーズが十二分にうまいのでこれでも全然イケるレベルである。粗食が基本の筆者的にはこれでも十分にご馳走だったのだ。
朝。本日も天候に恵まれ青空が見える。天気予報的にはミルフォード・サウンドが曇りマークとなっていたが、まあなんとかなるだろう。チャックアウト時に受付のおじいちゃんにミルフォード・サウンド行くことを伝えると、「日陰には気をつけろよ!」と一番重要な事を教えてもらう。日本にいるときから一番気にしていたのが、「ニュージーランドの9月の路面」。今のところ凍結路には遭遇していないが、南島の奥まった秘境にあるミルフォード・サウンドだけに、緊張感が走る。
テ・アナウのガソスタにて給油。1リッターで3ドルしない程度だが、やはりガソリンはニュージーランド高い。
テ・アナウからミルフォード・サウンドまでは一本道で迷いようがない。94号線をひたすら北上していく。最初は牧場の道が続くが、次第に岩肌がむき出しの殺伐とした荒野っぽい風景となり、最終的に樹海の中の道に突入する。
基本的に山道となるので、走る分には楽しい。路面もなんとか大丈夫そうだ。
超ダイナミックな山超え
ミルフォード・サウンドトンネル。
今まであまりトンネルに遭遇してこなかったニュージーランドツーリングだが、ここにきてやっと本格的なトンネルを通過することになった。日本のトンネルのように内壁がキレイに補強されている訳ではなく、むしろまだ工事中なのか?と思えるほどに岩肌むき出し&照明心許ないのがこの「Homer tunnel」だ。トンネルというか、隧道といった趣で晴れていたのに地面は水で濡れており勾配もあるため初見だと結構怖い。この時はほぼ車もいなかったため気楽だったが、ハイシーズンで渋滞でもしていようものならバイクだと色々辛そうだ。
ミルフォードサウンドに到着
そしてついにミルフォード・サウンドの終点に到着する。到着したのは昼前だったが、クルーズ船の時間まで少し時間があった。一旦駐車し、船着き場まで歩く。ここでもハエが大量発生していた。虫除けは絶対に日本から買っていった方が良い。
到着時の様子。駐車場はいくつかブロックが分かれており、数百台は駐車できそう。ただ、この時はあまり車は停まっていなかった。(後で判明するが、ほとんどの人がクイーンズタウンからの直通バスツアーで来ている模様だった)
伝説の鳥「カカポ」発見ストーリーなど地味に面白い情報が沢山ある。
THE景勝地、といった雰囲気の眺め。手前の沼が濁っていたのが少し残念。しかも天気も普通に曇りだし、やや不安になってくる。
チケットを購入し、チケット売り場の外に出てみた。
船着き場にはかなり大きめのクルーズ船が4隻程停泊していた。オフシーズンなのにこの集客力、やはり世界遺産ブランドは強い。今まで無人エリアばかり楽しんでいたため、普通の観光地感が出てきてやや動揺する。
一旦駐車場に戻り、早めの昼食を取る。パンにローストビーフと野菜、チーズ、塩コショウしただけの究極にシンプルなサンドイッチだが、非常に美味しかった。間違いなく肉のレベルが違うと感じる。
キャンピングカーで来ている人がかなり多かった。ニュージーランドで自走ツアーする人の大半はキャンピングカーを利用するようだ。とはいえ、モーテルはどこもきれいだしパラダイスのような場所もあるので、意外とキャンピングカー万能という訳でもない。と思っていると、この車の中からおじさんが出てきてわざわざこちらまで歩いてきて(80mくらいある)、開口一番
「それ何CC?」
と聞いてきた。本当にどこにでもいるんだな・・・排気量おじさん。と若干感動しつつ、オーストラリアからきて普段はトライアンフに乗っているというその御仁と会話した。1
ミルフォード・サウンドクルージング
本日の乗艦。双胴船。
海が青い。
船からはアザラシやらペンギンやらを見ることができるし、超強力な風を体感することもできるので本当におすすめ。何よりもとにかく神秘的な重厚感を感じる岩肌と海が、とても印象的だ。
天気は曇りで、風が荒れ狂うように吹き付けていたので出港するとすぐに甲板から人は居なくなった。
ネットで検索するとトップに出てくるクイーンズタウンからのツアーバス。正直クイーンズタウンからミルフォード・サウンドまでのバスツアーは、峠越え、無駄に多いアップダウン、まともなPAが一切無い道中とバスとして最悪の諸条件が揃っているのでオススメは全くしない。
逆に言うと、多くの人がバスで訪れるので彼らが帰ったあとは人が全くいなく、世界遺産ながらより静かで神秘的な空間を独り占めできるという寸法である。アクセスが悪すぎるがゆえの、バイクならではの特権である。
人類vsケア
暴風の中、意地で最初から最後まで甲板に立っていた為体力を消耗し駐車場に戻ってみると、バイク付近に何やら動くものを発見する。近づいてみると、鳥がデイジー号に乗ったり降りたりしているではないか。どこかで見たようなシルエットと色。
まさか・・・と思い近づいてみると
「け〜あーーー」とご丁寧にも挨拶してくれるケアがこちらを見ていた。筆者が近づいてバイクから降りたので、そのままどこかに行くだろうと見ていると、
こちらをジッと見た後、普通にバイクに接近し始めるではないか。
そしてヒョイっと羽ばたくと、一眼やダウンなどが入っているターポリンバッグに居座り始めた。人間と数十センチしか離れてないのに、自分から近づいてバイクに乗るとは全く想定していなかったのでとにかく驚く。ちなみに、自作したサンドイッチはパニアケースの中に入っていた。
それにしてもこちらの画像からも、ケアの大きさが分かると思う。実際結構ケアはデカい。
そして次の瞬間、あろうことかケアがターポリンバッグをついばみ始めた。いやその中一眼しか入ってないから!と日本語で言いってみるも理解せず、近づいても全く動じないのでどうしたものかと考える。相手は絶滅危惧種で日本で言うところの天然記念物、手出しは厳禁。
いやーこまったと思っているとケアのクチバシがターポリンを貫通しているではないか。恐るべき破壊力、と思いきや穴を開けたら満足したらしく、
「けあああああああああ」
と叫びながらどこかへ飛び去って行った。穴が空いて中から食べ物の匂いがしないから、要は済んださらばだ、とでも言いたげな様子だった。ちなみにケアの翼の内側は非常に鮮やかな朱色をしており、あまり飛行しているシーンを見ない鳥だけにぜひ飛び立つ瞬間は目を凝らして見てほしい。
荒涼としたミルフォード・サウンドからの道
ミルフォード・サウンドを飛び出してから数十分走り、ふと立ち止まって振り返ってみるとそこには巨大な山々と、その根本に向かって突き進んでいく一本の道が見えた。往路は、流石に世界遺産だけあって多少の車の流れがあったが、帰路は15時を過ぎると一気に車通りが少なくなったように感じる。特にクルーズ船の最終便が帰ってきた後は、急にミルフォード・サウンドから人気が無くなったように感じた。ミルフォード・サウンドはそこに至る道中も非常に素晴らしい自然や絶景ポイント満載なのだが、天気次第では帰りの道にて生命の危機に瀕する場所も多々あるため、雲が出始めると皆退散してしまうのかもしれない。言うまでもないが、この日バイクでミルフォード・サウンドを訪れたのは自分だけだったようだ。
まあそんな訳で、15時以降だと車通りもほとんど無くマイペースに絶景ツーリングを堪能できるので非常にオススメである。
途中、何台か車が停まっていたので撮影してみた絶景スポット。
おそらく天気が良いと水晶のように手前の湖に映り込んだ山がキレイ、という事になる景勝地だと思うのだが、かなり雲が出てきてしまっていたため正直微妙な感じに。だが、それでも今思い返すと相当すごい景色には違いはなかった。
このPAにはベンチと何故か焚き火場があり、炭などではなくその辺の木を豪快に燃やした形跡があった。燃やすものだけは事欠かないニュージーランドだけあるので、火の取り扱いだけには十分に気をつけて頂きたい。
ニュージーランドの辺境地帯にある一般的なバイオトイレ。いわゆるボットン便所だが、意外とトイレットペーパーが装備されていたりと結構有能。なんとなくロード・オブ・ザ・リング感を感じるのは筆者だけでないはず。
今回、クイーンズタウンなどの都市部を除いてバイクとすれ違うことはほぼ無く、そもそもこのエリアのような辺境に訪れる人は車を利用している場合がほとんど。2なので、基本的に車が利用しやすいように設備は整備されているので、バイクの取り回しで困る事はほとんどないのが有り難い。大体砂利道だが。
朝作ったサンドイッチが残っており手頃なベンチがあったので、休憩がてら食す。ミルフォード・サウンド方面からどんどん天気が悪くなっており、一瞬小雨が降るような瞬間もあったのだがなんとか持ちこたえてくれている。川岸のエリアだったのだが、ミルフォード・サウンドが近いからかこころなしかハエは少なかった。時たま通り過ぎる車の音以外無音な空間で30分程過ごす。
ミルフォード・サウンドの次の目的地であるインバーカーギルに向かう途中、既に数える事を諦めた給油。日本と同じく、ニュージーランドも地方ごとによって微妙にシステムだったりが違うのが面白い。スタンドの数も、北海道で神経を使うほど少なくなく、無人スタンドを含めると意外とどこにでもあるのが心強いところだ。
インバーカーギル着
インバーカーギルの市内に突入した頃の様子。既に日は落ち、宿によっては受付から人が居なくなっているような時間帯にモーテルに滑り込む。事前に電話で状況を説明していたため、受付スタッフが先に帰ってしまうという事態だけはなんとか避けたかった。
インバーカーギルの宿。駐車場が満杯で、自分の部屋の前を取れなかったので荷物の運搬が結構しんどかった。細かいが、やはり平屋型で自分の駐車場が目の前に確保されているスタイルが最高だと再認識する。
ネットワークの状況。駐車場は満車で、結構部屋も埋まっていたと見られるがそれでもなかなかのスピードが出ていた。明日に迫るエリザベス女王のお葬式についてのニュースを横目に、疲れのあまり即寝落ち。
終
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